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COLUMN

2021.02.09

デジタルクリエーションの最先端を捉えるフェスティバル「MUTEK.JP」~前編~

#渋谷#イベント#ヒント

イベント主催者から見る渋谷の価値とは

 

みなさんは「MUTEK(ミューテック)」というイベントを知っていますか?

“デジタルエンタメ先進都市”として世界に知られるカナダ・モントリオールで2000年よりスタートしたデジタル・アートとエレクトロニック・ミュージックのフェスティバルで、日本では2016年に初開催され、現在は発祥の地であるモントリオールの他に、メキシコ、バルセロナ、ブエノスアイレス、サンフランシスコ、ドバイと世界7都市で開催される国際的に名高いフェスティバルです。

今回はMUTEK を日本に招聘し、日本で開催されている「MUTEK.JP」イベントの企画運営をプロデュースする一般社団法人MUTEK Japanの岩波 秀一郎氏にインタビューさせて頂きイベント開催地としての渋谷の魅力を探ります。


岩波 秀一郎 (Shuichiro Iwanami)
MUTEK Japan / General Director
2,000年にカナダ・モントリオールにてスタートした、最新テクノロジーを駆使した電子音楽、オーディオヴィジュアル・アートの祭典MUTEK を日本に招聘。
国際的レベルでの文化芸術活動の振興、普及、クリエイティブ産業の発展を目的とし、一般社団法人MUTEK Japan 2016年に設立。アジア唯一の国として、文化芸術に関わる才能豊かな人材の発掘・育成をサポートし、常に新しいアイデアやコンテンツの創出支援をコンセプトに掲げ、自由で実験的な表現の場を提供するクリエイティブプラットフォームをグローバルで展開している。


 

―MUTEKには“尖ったイベント”という印象があるのですが、どのようなコンセプトがあるのでしょうか?

岩波 オーディオビジュアルアートの創造性の開発と文化芸術活動の普及を目的として国際的に名高い芸術文化活動を行う団体としてモントリオールからMUTEKは発祥しました。文化芸術に関わる才能豊かな人材の発掘・育成をサポートして常に新しいアイデアやコンテンツの創出支援をコンセプトに掲げ、アーティストやクリエーターにとって自由で実験的な表現の場を提供できる場としてのクリエイティブプラットフォームの構築を目指しています。
本国モントリオールのMUTEKは完全なる非営利団体NPOによって主催され、カナダ人のアーティストを支援していく活動として行われており、ケベック州全面サポートのもとモントリオールのアーツカウンシルや州政府が補助金でサポートしMUTEKというプラットフォームで支援していく構造になっています。
MUTEKはアーティストが海外で表現できる機会を創出するプラットフォームであり、そして開催地の地元アーティストを支援するというのがモットーですので、世界各国で開催されているすべてのMUTEKが、地元アーティスト50%・インターナショナルアーティスト50%で構成するというガイドラインを決めています。

―世界各国の主要都市で開催されていますが、MUTEKの開催エリアは毎年変わるのでしょうか?

岩波 今のところ毎年継続的に開催されているのはモントリオール、日本(渋谷)、メキシコ、バルセロナ、ブエノスアイレス、サンフランシスコの6都市ですね。定期継続ではないですが、ドバイでも開催しました。また、パリ、リヨン、シンガポール、韓国など各国の都市から開催のオファーを頂いています。

―まさに世界から注目を集めるイベントですね!ラブコールも多いということで、積極的に開催エリアの拡大を目指すのでしょうか?

岩波 どんどん拡大していくということよりMUTEKブランドの精神やコンセプトを守ることを大事に考えています。MUTEKのファウンダーであるアラン・モンゴー氏の考えで言うと、メジャーなイベントの多くが商業的なモデルである中で、MUTEKの目指す方向性は文化的なフェスティバルという立ち位置です。商業的なフェスティバルは絶対的な価値観でしかありませんが文化的フェスティバルは相対的な価値観を持ち、例えば無名なアーティストでも活躍できたりMUTEKでの出演を通して世間に知られる機会を与えようという考えで、様々な文化機関や大使館などにご協力頂き支援活動に繋げています。

―MUTEK.JPは、いわゆる音楽フェスティバルとは一線を画していると思うのですが、イベント参加者はどのような属性の方が多いのでしょうか?

岩波 デジタルクリエイティブ業界に携わる方、デザイナー、広告業界のクリエーター、大手企業のエンジニア、大学の研究者など、クリエイティブに興味のある方が来場されています。
学生も見られますが、どちらかというと会社や組織に属している方で「自分はこういうことをやっています!」と自分の表現を伝えてくる方が多いです。
メディアアート業界の展示というのは美術館でも見られたりしますが、ライブエンターテイメントで感じるオーディオビジュアルショーはなかなか見られないのでそういった空間体験を求めて来場している。という声も参加者の方から頂いています。

 

―MUTEKのコンセプトを体現することを前提にMUTEKの開催エリアとして選ぶ際の基準や必要要素とはなんでしょうか?

岩波 ローカルのマーケットを浸透させていくことと電子音楽とデジタルクリエイティビティの開発を行うためにはそのエリアが持つローカルとしての個性と、エリアが持つ情報発信力が重要だと思います。

―主催者や海外アーティストは「渋谷」をどのように評価していますか?

岩波 ファウンダーのアラン氏を2015年に渋谷に招待し渋谷の街を見てもらっているのですが、「街の発信するエネルギー、エンタテイメントシティとしてのエネルギーを感じる」とコメントしていました。
また渋谷は世界的にも認知されている都市ですので、ブッキングの際に「渋谷」と聞いて喜ぶアーティストも非常に多いです。来日滞在中は食事、買い物、エンタメ含めて簡単に手に入るエネルギッシュでコンビニエンスな街を満喫している様子でした。

―日本初開催である2016年のMUTEK.JPは渋谷で開催されましたが、そのあと開催エリアをお台場に移し、2019年からまた渋谷に戻ってきていますね。どんな経緯だったのでしょうか?

岩波 2016年の渋谷開催はWWWWWXのライブハウスを会場とした小規模なものでした。そして20172018年とお台場の日本科学未来館で開催させて頂きました。
ひとつのプレイスに大人数を集客できる大きなハコがあり、立地の良さやエリアの持つ特異性が開催エリアとしてのお台場の良さでした。
一方で本国のモントリオールでは街なかの様々な会場を使って同時多発的にフェスティバルを開催しており、もう少し本流に近づけて街の中でMUTEKをインストールすることにチャレンジしたいと考え、渋谷でそれができないかと考えていたところ、非常に良いタイミングで渋谷のデベロッパー企業である東急様とのつながりが生まれ、ご協力ご支援頂けたことで2019年は渋谷の街なかの6会場で開催し目指す形での展開ができ集客数も上がりました。

―本国に近づけた形を目指し、街での回遊型を渋谷で展開していますが、「回遊型」の良さとは何でしょうか?

岩波 会場によって体験価値も変わるので、様々な会場を使うことで様々な体験価値の提供が可能になります。例えば、2019年のMUTEKにおいては、LINE CUBE SHIBUYAでの1800席規模の着席型に合わせたコンテンツもあれば、渋谷ストリームホールでの500名規模の空間全体を使って提供できるコンテンツもあり体験価値の違いが作れます。テーマを会場ごとに設定することもでき、様々なコンテンツが共生・共存するという構成が作りやすいです。
また、参加者とアーティストが街なかの会場を行き交っている中ですれ違ったり会話したりする機会が多く生まれており、気軽に参加者がアーティストに技術的な質問を投げかけ学びとなる情報を得たりする場面も見られました。

―そんな気軽に街なかで“知の共有”が行われているとは驚きです!

岩波 そういった場面の他にMUTEK内では無料のワークショップなども開催しており、クリエーターの育成機能も大きく担っています。

 

―2020年はコロナ対策としてリアルとバーチャルのハイブリッド型で開催されていましたね。バーチャルの実施はMUTEKとしての新たな取り組みだったわけですが、リアル・バーチャルそれぞれの役割をどのように考えますか?

岩波 2020年は当初バーチャル100%の想定だったのですが、リアルが無いと体験価値が不足するのではないか。と東急様からご提案を頂きバーチャルとリアルのハイブリッド型で開催致しました。リアルは2020年も実施して良かったと思います。ハイブリッド型で見えてきたリアルの価値は「イマーシブ(没入感)」。没入型の体験価値による圧倒されるようなコンテンツの提供はバーチャルではなかなかできません。バーチャルの価値で言いますと、今回バーチャルでの参加者数はリアル会場の集客数の約20倍でした。ローカルアーティストを世界に伝えていくというコンセプトを掲げている中でリアルの集客規模ではなかなか伝わらないのも事実。バーチャルのストリーミング技術が様々な人に伝える機会を創出するので、リアルとバーチャルのハイブリットは今後主流になると思います。

―では最後に今後のMUTEKとしてどんなことを目指していきたいですか?

岩波 芸術文化活動を浸透させるべく、年に1回のフェスティバルだけでなく、その他単発の企画も行いさらなるアーティスト支援を強化していきたいです。そして日本の若いアーティストやクリエーターが海外で活躍し、日本人としてのアイデンティティを世界に発信してほしいと思います。

 

岩波さん、どうもありがとうございました。
後編は、「MUTEK.JP」を渋谷に誘致した東急㈱のご担当者から、経緯やまちづくり視点での魅力的なイベントについてインタビューしていきます。

後編はこちら


▽MUTEK.JP 2020オフィシャルサイト

https://tokyo.mutek.org/


 

岩八重 祥子 / Shoko Iwayae

1983年福岡県生まれ。広告営業、企画プランニング経験を経て企画開発本部ソリューションチームに配属。新規事業「ワンストップ渋谷」の立上げ、戦略に携わる。
渋谷の好きな場所は家系ラーメンの「侍」。現在はグルテンフリーに挑戦中のため大好きなラーメンを休止。

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