2021.03.02
#渋谷#イベント#ヒント#ロケーション
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、イベントでの“集客“が難しくなっている2度目の緊急事態宣言下において、渋谷でイベントホール・屋外イベントスペースを保有する商業施設の運営担当に”コロナ禍でのイベント実施“についてどう考えているか、リモート取材してみました。
今回取材にご協力いただいた商業施設は、渋谷では最大級のイベントホールをもつ「渋谷ヒカリエ」、屋外イベントスペースをもつ「渋谷キャスト」、イベントホールと屋外イベントスペースを併せもつ「渋谷ストリーム」ほか、「東京カルチャーカルチャー」「SHIBUYA QWS(「渋谷スクランブルスクエア」15階)」屋上スペースをもつ「東急プラザ渋谷」。
渋谷エリアに共存する各商業施設が“コロナ禍でのイベント実施”について現在どう考えているのかお聞きしたところ、さまざまな答えが返ってきました。
―コロナ禍でのイベントスペース稼働状況に大きな変化はありましたか?
■渋谷ヒカリエ
田行礼奈(東急株式会社 ビル運営事業部 渋谷運営グループ 価値創造担当)
ヒカリエホールの稼働率・問い合わせは、ともに1/3から1/2程度減少しました。
1回目の緊急事態宣言の時は稼働ゼロでしたし、コロナ前には一日に約1万人が来場するようなBtoC向けのイベントもありましたが、BtoC向けの集客を伴うイベントのお問合せはほとんどありません。
今は、人数を絞っても開催できるようなBtoB向けの展示会や記者発表会が多いですね。
■SHIBUYA QWS(渋谷スクランブルスクエア15階)
渡邉博之(渋谷スクランブルスクエア株式会社 営業一部)
1回目の緊急事態宣言下は臨時休館のため稼働ゼロ。
6月再開後は徐々に回復傾向にありましたが、2回目の緊急事態宣言によりキャンセルが増えてきています。
―ヒカリエホールは渋谷では最大級の広さ、SHIBUYA QWSは15階でガラス張りのホールとなりますが、配信イベントのお問い合わせは多いですか?
■渋谷ヒカリエ
田行 広すぎるホールに配信イベントはあまり馴染んでいない、と感じています。
配信イベントに対応したプランも設定しましたが、あまり引きがなくホールの特性を生かしたプランを提供することの重要さを感じています。
■SHIBUYA QWS(渋谷スクランブルスクエア15階)
渡邉 コロナ禍においては実施イベントのほとんどで配信が取り入れられ、ハイブリットもしくは完全オンラインでのイベント主体に変化しました。
直近2か月以内かつ無観客配信イベントに限り、お得にホールをご利用いただける「動画配信プラン」を新しく導入し、ご好評を頂いています。
―商業施設として新たに取り入れたサービスはありますか?
■渋谷ストリーム
飯島隆人(東急株式会社ビル運営事業部 渋谷運営グループ 価値創造担当 兼 沿線生活創造事業部 エンターテインメント戦略グループ)
さまざまなイベント主催者に適した、選べる配信プランをすぐに設定しました。
あと、配信イベントを検討していたがコロナの影響で中止した事業者向けの「配信振替キャンペーン」も新たなサービスとして導入します。
※現在の配信プラン情報はこちらをご覧ください。
■渋谷ヒカリエ
田行 運営母体が一緒である渋谷ストリーム・渋谷キャストも同様の対応ですが、いわゆるコロナ対策備品はいち早く用意し、イベント主催者様に適宜貸し出ししていました。
非接触型の検温器など、お客様が準備しにくい備品類をすぐに準備したので、お客様(イベント主催者)には非常に喜ばれました。
―スペース運営上、今困っていること・課題と感じることはありますか?
■渋谷キャスト
岩本拓磨(東急株式会社 ビル運営事業部 渋谷運営グループ 営業推進課 兼 価値創造担当)
キャストの知名度がまだまだ低いので、発信力強化が課題です。
いまは会場で集客イベントを行いつつ、オンラインコンテンツも用意するようなハイブリット型のイベントもあるので、(施設としての発信力を強化して)オンラインコンテンツへの誘導も頑張らなければいけないと思っています。
■東急プラザ渋谷
藤本・福本(東急不動産SCマネジメント株式会社 運営本部 第1運営部 東急プラザ渋谷)
施設自体の認知度アップが課題。
コロナ禍でのオープンでしたので、旧プラザをご存知の方でも再オープンしたことを知らない人がまだまだ沢山いるので、実績づくりが重要と考えています。
―コロナ禍を意識する/意識しない場合のアピールポイントはどんなところがありますか?
■渋谷ヒカリエ
田行 渋谷で最大規模といわれるホールなので密になりにくく、いかようにも装飾できるシンプルなつくりになっているのがヒカリエホールの魅力です。
■渋谷ストリーム
飯島 ストリームの魅力だと感じるのは、スタンディングの音楽ライブができること。
ホール(6F)と合わせて、4F・5Fもフル活用できるところも魅力です。
コロナ禍では人が密集することが難しいので、ソーシャルディスタンスを確保して着座で、となると変化が大きいですが。
■渋谷キャスト
岩本 屋外イベントスペースをもつので(イベント実施の際に)密が避けられる、という点。
あとは他の商業施設と比べて、お客様の属性が違うと感じています。
近隣ではミヤシタパーク開業の影響もありました。キャットストリートが近いのでアパレル路面店で働く若い人たちも多いし、周辺にスタートアップ系の小さなオフィスが沢山あります。
■東京カルチャーカルチャー
横山シンスケ(イッツ・コミュニケーションズ株式会社 東京カルチャーカルチャー店長・チーフプロデューサー)
これまで“飲食しながらイベントを見ることができる”のがカルカルの売りでしたが、今は飲食イベントを完全ストップしているので……。
一方、コロナ禍で(配信の需要が高まるなか)そもそも配信の仕方を知らない企業・タレントも多いので、“運営・配信を承ります”というのはよく言っています。
出演者のブッキングまで請け負うことも。100人(規模)を盛り上げる企画づくりには自信があります。
■渋谷スクランブルスクエア
武藤真守(渋谷スクランブルスクエア株式会社 商業・展望Dept.(営業二部) プロモーションDiv.)
駅直上の商業施設なので雨に濡れずに移動可能、連絡通路がつながっているので他施設からのアクセスも良いところです。
渡邉 渋谷駅直結直上の施設という点で立地条件が非常に良いです。あとは眺望環境。
イベントスペースにしては珍しく2面ガラス張りになっているので“渋谷の街でイベントをしている”という演出が可能です。
実際に配信イベントでも“映える“とのお声も多く頂戴しています。
■東急プラザ渋谷
藤本・福本 屋上スペースは、屋外なので3密になりにくいという点。
あとは大型配信イベントや音楽イベントが実施できる環境も整ってきました。
とはいえ2019年12月のオープンでさまざまなジャンルにも挑戦していきたいと思っているので、「こんなのって出来ないかなあ……」という内容でも一度ご相談いただきたい。どのような内容であっても一旦お受けする方向で考えたいです。
そういう意味でも、渋谷エリアでは比較的自由に企画内容・料金含め融通がきく施設だと思います。
―コロナ禍で「集客」から別の価値へ変化が生じたと感じますか?
■渋谷ヒカリエ
田行 コロナ禍で実施したBtoC向けの某展覧会を通して思ったのが、コロナ禍で外出が制限されているなかで、久々のリアルな体験に満足している様子をみて、これからは体験の“質”をより重視するようになっていくと感じました。
“生の体験でしか得られない“ような工夫が必要になっていくと思います。
■渋谷ストリーム
飯島 1回目の緊急事態宣言でしばらくイベントが出来なくなって、宣言解除で規制のもとイベント可となっても、配信イベントのみがほとんどでした。
でも、徐々に配信と少人数の集客を行うハイブリット型が増えてきて、2回目の緊急事態宣言下では集客イベントもやっています。
やっぱり生(での体験)っていいな、という感覚を世間が知っているからこそ、配信だけが増えていくことはないと思います。
■渋谷キャスト
岩本 とにかく今は、人が街(渋谷)に出てきてよかったと思えることが大事。
感染者数が少し減り、世間の意識が上向きになった時期に、キャストの屋外広場でマルシェイベントを実施しました。
マルシェ出店者たちから「この状況でイベント開催してくれて嬉しい」という声があったのが有り難かったです。
そういう人たちに少しでも場を提供し続けること。
安全安心が前提だけど、携わる人たちが楽しいと思ってくれることが今はもっとも大切だと考えています。
■東京カルチャーカルチャー
横山 いまは誰もが、ゴールがないまま進んでいると思っています。
明確に言えるのは、イベントスペースは配信に手をつけざるを得なくなったこと。
配信をやって気づいたのは、音楽・エンタメ業界はとくに「生(での体験)がすべて」という古い考えが染みついていた。
でも、先日カルカルでイベントを実施した時、会場にいながらスマホで配信をみている人がいたんです。
ステージを目の前にするとお客さんは喋らないけれど、オンライン上で出演者にコメントを送っている。
(そんな光景を目の当たりにして)リアルってなんだろう……というのが大きなテーマとなりました。
■SHIBUYA QWS(渋谷スクランブルスクエア15階)
渡邉 変化を感じます。これまで集客イベント実施の場合は広さ・立地などが重要視されてきました。
コロナ禍ではイベントにおける配信の比重が非常に高くなり、配信を通じた情報発信のしやすい場としてのホール利用に変わってきているため、通信環境など会場のスペックを重要視されるお客様が増えています。
今後コロナが収束に向かって集客イベントが増えても、オンライン配信もセットで行う需要は継続するのではないかと考えていますので、ホールとしてはそのニーズに応えるための機材準備とスタッフの育成が必要だと思っています。
―今回の取材を通して、渋谷エリアに共存する各商業施設は、コロナ禍において変化するお客様ニーズやトレンドを捉えながら、イベントに最適な環境づくりに必要なもの、新しい価値とは何かを日々模索している様子がうかがえました。
また、一般のお客様の安心安全のため、商業施設として利用条件の制約をかけなければいけない部分がありつつも、“閉塞的な世の中ではあるが、楽しいイベント実現のために施設として柔軟な対応をみせていきたい”という共通意識を持っていると感じます。
このコラムでは、これからもリアルタイムな商業施設運営担当の声を発信していきます。
取材にご協力いただきました皆様、ありがとうございました!
菅原 理紗 / Risa Sugawara
2017年入社。
東急グループ施設情報を集約した「渋谷イベントスペースガイド」企画立ち上げ・編集を担当。
SHIBUYA FASHION WEEKでは事務局を務める。
頑張った日のご褒美ランチは奥渋谷にある「吉野」のうな丼か、「KURA」の納豆パスタ。
King Gnuのファンで、いつか渋谷の工事現場でライブが企画できないかと目論んでいる。
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