2021.04.13
#渋谷#イベント#ヒント
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、イベントやプロモーションの方法に悩まれている事業者の方も多いのではないでしょうか。そこで、渋谷区が主催するイベントや新型コロナ対策に関する支援事業に関して、渋谷区職員の方にリモート取材してみました。コロナ禍でイベントやプロモーションの在り方に悩まれている事業者の方のヒントになるような情報をたくさん聞くことができました。
例年行われている渋谷区主催のイベントである、「おとなりサンデー」(ご担当:地域振興課 山口さん)と「くみんの広場」(ご担当:文化振興課 廣沢さん)にコロナ禍でのイベント開催について伺いました。
■おとなりサンデー
渋谷区 区民部 地域振興課 協働推進主査 山口啓明(やまぐちけいめい)
■くみんの広場
渋谷区 区民部 文化振興課 廣沢由紀子(ひろさわゆきこ)
仕事はくみんの広場企画の他に海外派遣研修や少年少女合唱団の運営等幅広いです。それぞれの事業で専門的な方々とやり取りすることも多いですが、毎回尊敬するとともに刺激を受けてます。
地元団体だけではなく、地方公共団体や民間企業まで、出店参加・連携の門戸が広いこの二つのイベント。
「おとなりサンデー」では参加者同士で生まれた「つながり」を通して新たな取り組みに発展した事例もあるようです。
今後、どのような団体との連携を期待しているのかまで、深堀して聞いてみました!
開催時期 6月第一日曜日
開催概要
フランス・パリの孤独死を防ぐための「隣人まつり」をベースにしたイベント。6月第一日曜日を「渋谷おとなりサンデーの日」と設定し、実施から2~3年目には1日だけでなく6月全体を「地域交流・地域活動の強化月間」として活動を拡大。参加者投稿企画「みんなのおとなりサンデー」は、東急㈱やスターバックスコーヒーの店舗など多くの事業者も参加している。制限はなくWEBサイトから登録すれば、「渋谷おとなりサンデーの日」公認で個人の企画を実施することも可能。
開催時期 毎年11月の第一土日@代々木公園
開催概要
2日間で約10万人の来場者がある、渋谷区最大級のフェスティバル。区内の様々な分野の団体が実行委員会を組織し、区は共催者として参加。1978年に区の歌、花、木を制定した記念として第一回が開催されて以降、渋谷を愛する人々が手を結び「わが街と誇れる渋谷」を目指して毎年開催してきた。
渋谷区と交流のある街や市も参加し、名産品や特産品の販売も盛ん。
おとなりサンデー:山口)
パリの隣人祭りと同様、孤独死防止のほか、町会の活発化も目的の一つです。
都市部は特に町会・町内会の活動が活発でない傾向があり、全国平均町会加入率は7割程度のところ、渋谷区は平均をかなり下回っているようです。町会でイベントをすることで「何をする組織なのか」「どんな人がいるのか」が見え入会促進の狙いもあります。
さらにおとなりサンデーは6月実施なので、そこでつながった人と町会ごとの夏祭り等でさらに交流を続けることで町会に根付いてもらいやすいんです。他エリアで働いている会社員の方などは特に近所付き合いが全くない方もいらっしゃいます。そういう方々にもぜひイベントに参加いただけたら嬉しい。シニア層だけでなく、子育て世代、若年層まで幅広い世代に交流いただくことで、災害時にもお互いを助け合うことにもつながりますからね。
くみんの広場:廣沢)
渋谷区民が一体になれる行事がないことを寂しく思われる声が多くありました。このイベントを通して参加者・来場者に渋谷区をよりよく知ってもらい、”わが町と誇れる渋谷”を再発見してもらう目的があります。さらに地元愛・渋谷愛を感じてほしいですね。また秋田県大館市、長崎県佐世保市など交流自治体も地元特産品の販売を行い、海外ではチェコ共和国、ラトビア共和国などの紹介も行っています。様々な地域との交流を生み出す役割も担っていたりもします。
―どのように交流自治体を選定しているんですか?
くみんの広場:廣沢)
選定しているということではなく、これまで様々な区政の展開の中で、協力・友好関係を築いてきた自治体に参加いただいています。趣旨にご賛同いただける自治体にはお声がけしていきたいですね。
おとなりサンデー:山口)
2020年3月中旬に渋谷区広報紙で告知してひと月経たないうちに、緊急事態宣言が発令されました。当初は開催するかどうかも迷いましたが、せっかくイベントが根付いてきたところこともあり、中止するのはもったいないとのことで、オンライン開催を目指しました。
くみんの広場:廣沢)
多くの人を集める会場開催は断念しました。コロナ下での開催を不安に思う参加団体も少なからずいたのも事実です。ただ、実行委員会としては長い歴史を持つこのイベントを継続させることを第一に、会場開催をオンラインに移して特設サイトを立ち上げました。サイトは「渋谷区基本構想」のイラストをデザインしたイラストレーターの後藤美月さんが担当してくださいました。開催当日は実行委員長・名誉区民である井上順氏や長谷部健区長によるトークをリアルタイムで配信したり、区民団体の活動PRや演技動画の掲載をしました。これらの動画は各団体から提供いただいたり、区が取材を行って集めたりしました。
またオンラインスタンプラリー、クイズなど参加型コンテンツを設け、賞品も用意しました。
クイズはお菓子の詰め合わせを、スタンプラリーはランチチケットや、SKY展望台チケットなどをプレゼントしました。倍率はかなり高く好評でした!また、渋谷への理解を深められる歴史コンテンツ(渋谷区を縄文時代から見る、くみんの広場の歴史を文章と写真で見ることができます。)も用意しました。アーカイブは現在もサイト内でご覧いただけますよ。
―渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」との連携もあったようですね。
おとなりサンデー:山口)
はい。テーマを設けて4回放送で座談会放送を実施。「渋谷おとなりサンデーの日」当日の特別番組には区長、区議会議長も各自の自宅から参加しました。実施してみて、若い人はインターネットを活用しているのでとっつきやすかったのですが、お年寄りは参加が難しかった印象があります。ラジオでは放送だけでなく、YouTubeでも放送風景を配信しました。
くみんの広場:廣沢)
そうですね。ラジオならば、インターネットは苦手という人にも聞いてもらえ、より幅広い人に楽しんでもらえると思い、これまで区のイベントとのコラボで実績のある渋谷のラジオに協力いただけるよう区側から依頼しました。
事前番組には担当者として区の職員も参加しました。ビデオ録画されている収録は初めての体験でしたね。
―参加者からの反響はいかがでしたか?
おとなりサンデー:山口)
WEBサイト記録映像に参加者の声が載っている通り、初めて参加した方は「現場に行って初めての人と顔を合わせるよりも、オンラインのほうが気軽に参加でき敷居が低かった」との好意的な意見を寄せていただきました。実際にオンラインイベントの「Zoom井戸端会議」では84名もの方が参加してくださいました。
くみんの広場:廣沢)
リアル開催時は10万人参加いただいているイベントで今回のオンライン開催にあたり、どれくらいの人が訪れてくれるか不安でしたが、想像を超える多くの方に参加いただきました。オンラインアンケートによると、小学生~高齢の方まで幅広く見ていただいていました。また区外からもアクセスがあり、かなりうれしかったです。統計でみると都外からのアクセスも多かったようです。参加団体の方も渋谷区に住んでいる方だけではないので、例年参加している方が見てくれたのかもしれませんね。
またLINE渋谷区公式アカウントで告知を行ったので、その効果がアクセス数にかなり大きい影響があることも分かりました。
参加者の声としては「オンラインはどこにいても見られる」「いつもは参加団体として出店しているので、他の団体を見られなかったが、今回は改めて知ることができた」「渋谷の歴史が同時掲載されているので勉強になった」などがありました。
―オンラインならではの課題はありましたか?
おとなりサンデー:山口)
課題は、お年寄りが置いてけぼりになってしまうところですね。最近はご高齢の方でもスマホを持っている方も多いですが、(Zoomなど)初めてのことには戸惑ってしまうことが多かったようです。孤独死防止という隣人まつりのコンセプトは少し離れてしまったかもしれないですね。
くみんの広場:廣沢)
「オンライン上だと臨場感がない」「一方的だった」との声がありました。課題クリアのため、より双方向交流を意識した機能を持たせ、参加していることが実感できるようなサイトにしていきたいですね。例えばTwitterでつぶやいた内容を掲載できたりしたらいいですよね。
―アフターコロナにおいてのイベント開催の展望を教えてください。
おとなりサンデー:山口)
オンラインだから参加できた!という声があったので、次年度以降もオンラインは何らかの形で残したいと思っています。来年度の開催については感染状況を見ながらオンライン主体で実施の方向で考えています。
一方、オンラインだけでは繋がっている実感が持てないという声もあるので、各種安全ガイドラインを参考におとなりサンデーでも安全ガイドラインを提示した上で、各自安心して実施できるように準備を進めています。
くみんの広場:廣沢)
今後の開催は、リアルとオンラインを両方使ったハイブリッド開催を望む声が多かったです。リアル会場で盛り上がりたい!ということはもちろんですが、オンラインは外出が難しい方にも参加してもらえると思います。次回はハイブリッド開催で検討を進めています。「集まらなくても集まれる」から「その場にいる人もいない人も参加でき、渋谷を好きになってもらえる」ことを目指して、リアルとオンラインを繋ぐコンテンツを用意したいと思っています。
おとなりサンデー:山口)
より多くの鉄道会社が入ってくれれば地域に根づいていることもあり、知名度が高く、広がりやすくなるのではないかと思います。
参加いただいている民間企業としては伊藤園さんがイベントで飲料提供をしてくださったり、みずほ銀行は銀行窓口サイネージでおとなりサンデーの映像を流してくれたりしました。
スターバックスさん、伊藤園さん、みずほ銀行さんは先方から積極的にご協力のお声がけをいただき、連携が実現しました。
くみんの広場:廣沢)
イベントの更なる発展につながる事業者とコラボしたいと思っています。
また、多くの大学と連携することも魅力的だなと思います。ハイブリッド開催を目指すにあたり、オンラインに強みのある事業者様ともぜひ連携したいですね。
―どのような手続きを踏めば、民間団体はイベントに参加できますか?
おとなりサンデー:山口)
地域振興課窓口またはWEBサイトのメールフォームからお問合せいただければ、どのような取り組みでご一緒できるか相談を受け付けています。
くみんの広場:廣沢)
これまで広場を支えてくださった実績をお持ちの団体様が多くいらっしゃるので、新規の参加枠には限りがありますが、開催趣旨に沿った明確な公益性があれば参加いただけるチャンスは作っていかなければいけないと思っています。
ご用意できた参加枠については、渋谷区HPや特設サイトで公募を行いますので、お申込みいただければと思います。
―「交流」がキーワードとなる2つのイベント。このイベントを通して生まれた事業や取組事例があれば教えてください。
おとなりサンデー:山口)
おとなりサンデーの参加者である子育て世代同士の繋がりによって地元の商店、飲食店を巻き込んで代々木深町小公園でマルシェを開催しました。
また、卒園児の母たちが出身保育園で映画鑑賞会を実施するなどの事例もあります。
このような派生事例に関しては、費用のバックアップこそしていないが、おとなりサンデーのWEBサイトやFBでポスタービジュアルを投稿できるなどの宣伝・告知協力を行っています。また個人では難しい道路使用許可申請等の役所関連業務のバックアップも積極的に行っています。
コロナ禍であるからこそ、人々の「つながり」や「交流」の価値が高まっている昨今、オンライン上でもつながっていると気分が晴れますよね。「集まらなくても集まれる」というくみんの広場のテーマはコロナ禍でのイベントやプロモーションの在り方そのものであるような気がします。
参加するだけではなく、出店に関しても柔軟にご相談に乗っていただけるようなイベントですので、団体や企業が渋谷で「つながり」や「交流」を生むチャンスにもなりそうなイベントですね。
後編では、「テラス営業に関する規制緩和」について渋谷区役所産業観光課の小川さんへのインタビューの模様をお届けします!
このコラムでは、これからもイベントレポートやインタビューなど、渋谷エリアの最新動向を発信していきます。
渋谷エリアのイベントスペースやユニークベニュー、駅・屋外広告についての情報はPLACEをご覧ください。
片平 葉奈 / Hana Katahira
2020年9月まで渋谷駅前のエリアマネジメント業務に携わっておりました。渋谷駅前の開発情報やエリアマネジメント、渋谷区をキーワードに記事を書いていきます。ちなみに渋谷で一番のお気に入りスポットはエリアマネジメントとは全く関係ありませんがネパール料理のカンティプール。(2020年12月17日に閉店…泣)
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